
眼瞼下垂は、まぶたが下がってきて見にくくなる状態です。
まぶたは上眼瞼挙筋やミュラー筋と呼ばれる筋肉が、瞼板と呼ばれるまぶたの芯となる構造を引き上げることで開きます。筋肉と瞼板は、腱膜という組織で繋がっています。
この腱膜が加齢によりたるんでくると筋肉の力が瞼板に効果的に伝わらず、まぶたが上がりにくくなります。これにより物が見えにくくなり、眠そうな印象を与えます。また、おでこの筋肉を利用してまぶたを上げようとするため眉毛の位置が高くなり、額のしわが目立つようになります。また頭痛や肩こりの原因になることもあります。
眼瞼下垂症の医学的な診断基準は、目安として“上まぶたの縁と黒目の中央部の距離(margin-reflex distance)”が3.0~3.5mm以下になった場合と定められています。診断基準を満たさない状態では自費治療の対応となります。
眼瞼下垂の種類
眼瞼下垂は三つに分類することができます。一つめはまぶたを上げる腱膜が加齢などによりたるんでくる後天性眼瞼下垂、二つめは筋肉や腱膜には異状のない偽眼瞼下垂、三つめは生まれつきの先天性眼瞼下垂です。それぞれの原因に対応した治療が必要となります。
- 後天性眼瞼下垂
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加齢やコンタクトの長期装用に伴いまぶたを開ける筋肉が薄くなり、挙筋の収縮がまぶたに伝わらなくなることが原因です。下垂の程度に合わせて、軽度の場合には挙筋腱膜前転法、中等度~重度の場合はミュラー筋の前転等を検討し施行します。
- 偽眼瞼下垂
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まぶたの筋肉の働きは問題無いものの、まぶたの皮膚のたるみが強くなり垂れ下がり、まぶたが下がって見える状態です。偽眼瞼下垂も視界が遮られ視野が狭くなったり、まぶたの重たさ、頭痛、肩こりを感じやすくなったり、おでこにシワが寄りやすくなるなどの症状が現れます。治療法は眉下や上眼瞼の皮膚を切除する余剰皮膚切除術を施行します。
- 先天性眼瞼下垂
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生まれつきまぶたを挙げる筋肉や腱膜が弱く、眼を開けにくい状態です。
片側と両側の場合があります。下垂の程度が軽度で、挙筋の状態が比較的健常な場合は、拳筋前転術を選択します。重度の下垂の場合は、おでこの筋肉の動きをまぶたに伝えることで眼を開けられる手術(前頭筋吊り上げ術)を施行します。